宮古民謡の方言と発音
宮古民謡を学ぶ上で、高いハードルの一つとなるのが「言葉」、宮古の方言であると思っている方は多いのでは無いかと思います。
みゃーくふつ(宮古の方言)
私自身も、宮古に暮らす方の唄を聴いて、内地の我々にはクリアできない言葉のハードルを感じたことは一度や二度じゃありません。
言葉の意味などに関しては、幾らでも書籍はあるし、ネットで調べることも今の時代は簡単なことでしょう。
歌詞にはこんな単純な言葉は出てきませんが、たとえばです、「みゃーくふつ」は「宮古の方言」、「たんでぃがぁーたんでぃ」は「ありがとう」、そんな風に理解すれば良いだけのことです。
難しいのは、その宮古の方言を、実際に自分の声で話すこと(歌うこと)です。
今でこそ私なども、入会したばかりの方々と比べると、それらしく聞こえる様にはなったと思いますが、宮古の人達からすれば、テレビで見る、関東の人たちがしゃべる大阪弁みたいなもんだと思います。
舌先母音
宮古民謡の歌集や工工四などを見ていると必ず出てくるのは、「す゜」と言った表記です。「゜」が「す」や「き」に付いてるので、始めて見た時はミスプリントじゃないかと思ったものです。
研究者たちの専門用語では、舌先母音(まえじたぼいん ぜんぜつぼいん)と呼び、宮古言葉の発音の中でも難易度の高い言葉の一つだと思います。先生やCDで宮古民謡を聞くと、私達の耳には「す゜」は「ず」と聞こえて来る音です。
豊年の歌の、歌い出しを聴いてみてください。
今年から始みゃしよ(くとぅすから ぱす゜みゃしよ)
と、いきなり舌先母音が出てきます。
舌先母音の発音の仕方
多良間島出身の清村先生からは「い」の口の開き方で「ず」と発音してみてください、と指導がありました。
広島のたるーさんのブログには、舌先母音とは「舌先、あるいは前舌の舌先寄りの部分を歯茎あるいは歯茎寄りの口蓋に接近させ、せばめをつくっている」と書かれてありました。>>> なりやまあやぐ (宮古民謡):たるーの島唄まじめな研究
ウィキペディアには「舌の最も高く盛り上がった位置が最も前で調音される母音。あるいはその位置に近いものも含む」
さらに、その手の本を調べて行くと中舌母音(なかじたぼいん ちゅうぜつぼいん)という言葉もでてくるわで、もはや文字情報だけではお手上げです。
不親切な話なのですが「やはり習うより慣れろ」がもっとも近道、時間とお金が許す限り宮古島へ足を運んで、普段からたくさん民謡を聞いて、たくさん歌う、たくさん会話をする、残念ながらこれしかありません。
方言の難しさ
三線をはじめたばかりの人は知らない人も多いのですが、琉球諸島では島々によって言葉も変わってきます。
例えば、沖縄の方言としてよく知られる「いらっしゃい」という意味の言葉も、沖縄本島では「めんそーれ」ですが、宮古島に行けば「んみゃーち」、八重山では「おーりとーり」、奄美へいくと「いもーれ」です。
実は、こういった言葉も、更に各島々へ行くと微妙に変化したり、全く違った言葉になったりもするからややこしい、同じ宮古島のなかでも、宮古の中心地の平良と池間島、伊良部島、多良間島では微妙に言葉が違ってくるんですから、たまりません。
その結果、特に独学で演っている人は、同じ唄を歌っても、各島々の言葉が混ざってしまったハイブリットな唄が出てくるということも起こってしまいます。
そこまで突き詰めて唄三線をやるのか?という話は各自の取り組み方ですが、そういうことがあると覚えて置くと、自分の中の民謡がまた違った、もっと深い唄になるのではないでしょうか。
内地の人の中には、南の島に暮らす方は、今も夜な夜な集まって、三線弾いて踊ってると思ってる方がおられます。
そんなことがあろうはずもないのは、三線やる人にはご存知の通り。もっと言うと、私達が学ぶ宮古民謡に出てくる方言を使って生活する、宮古に暮らす人は既にほとんど居ません。
メディアがこれだけ日本中に行き渡った結果、特に若い世代になるとそれは顕著で、言葉に関しては、将来、各島々の方言は無くなってしまうと指摘する人もおられます。
こういうことも内地の方は知らない人が多いです。
これは宮古島の方言だけに限らず、日本中の各地方の方言も同様で、「宮古民謡を学ぶと言うことは、宮古の文化を後世に伝えて行くこと」ですよ。先生にはそんな風に教えていただきましたが、宮古民謡を知れば知るほど、そういったことも実感する用になりました。
これからも、肝に銘じて取り組みたいと思っています。
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