暦(こよみ) 新暦と旧暦の話
一昔前という言い方を良くするけれど、令和の時代になった今は、昭和の時代も既に二昔前、明治大正の話となると昔々となってしまうのかもしれません。
と言う話はさておき、沖縄や宮古、八重山や奄美の島々など、琉球の民謡を学びながらあちこちに足を運んでいると、割と頻繁に出てくるのが「旧暦」という言葉です。
例えば、
「旧暦の8月8日から3日間に渡って行われる多良間島の豊年祭」
「毎年旧暦9月9日に行われる加計呂麻島(かけろまじま)に伝わる諸鈍シバヤ」
昔からその土地々々に伝わる行事などには、必ずと言ってよいほど「旧暦」という言葉が登場して、頭が混乱してしまいます。
暦(こよみ)について
改めて、暦と言うものをネットで検索してみると、Wikiによれば「時間の流れを年・月・週・日といった単位に当てはめて数えるように体系付けたもの。」とあります。
深く考えなくても、今の時代を暮らす私達にとっては、例えば、カレンダーや時計。それらが無ければ、もはや暮らしていけないのはご存知の通り、当たり前に日々の暮らしの中にあるものです。
カレンダーが無ければ、唄三線の稽古にも出かけることは出来ないし、一緒に食事する約束一つも出来ないのが今の時代です。
ところが、旧暦というものを知るには、今私達が普通に使っているカレンダーというものでは片手落ちだということを改めて知ることになります。
そして、暦と一言で言っても様々な暦が存在することも知る必要があります。
太陽と月
暦の基準の一つ、多くの暦の元となっているのが、太陽と月です。
太陽と基準とした太陽暦、月を基準とした太陰暦、その両方を取り入れた太陰太陽暦があります。今、こうして旧暦と呼ぶ暦は、太陽と月を取り入れた太陰太陽暦です。
当たり前と言えば当たり前のことですが、太陽が昇り降りするから昼夜が存在し、その傾きで南北に長い日本には、各地に色んな春夏秋冬があり、月の満ち欠けに引っ張られて、潮の満ち引きがあります。
本来、人はそれら、自然と合わせて、共存の上に、日々があると言うことは疑うべくもないこと、日本での暦と言うものは、自然の営みと共にあるものだと改めて思います。太陽と月は偉大です。
新暦と旧暦
我々が現在、日々の暮らしの中で使っている暦はグレゴリオ暦(太陽暦)と呼ばれ、太陽の動きを元にローマで作られた暦です。
対して、今回のお題となっている旧暦は、明治の時代になるまで(天保暦とも呼ばれ天保15年~)我が国で使われていた暦で、太陰太陽暦です。(琉球が日本だったのか?という話はさておきますが)
今の時代でも、年中行事や占いの世界では当たり前に太陰太陽暦が使われているというのは、元来我々日本人が自然と共に暮らしてきたからです。
いわゆる旧暦は、農耕中心の多くの日本人のそれまでの暮らしと相性が良かったわけです。
では、何故、そんな日本に根づいた太陰太陽暦を廃止して太陽暦が取り入れられたかと言うと、明治の時代になり鎖国が解かれ、世界規模でグローバルな太陽暦に合わせられたということです。
分かりやすい例を出すと、現在の暦で行われる七夕祭を見てください。七月七日は、本州では一般的には梅雨の終わりの頃、雨ばかりで天の川など見えやしない(汚れてしまった空はさておき)、と子供心に何時も思ってました。
ところが、本来、昔から行われている七夕祭は旧暦、日本の旧暦だと八月に入ってから行われるものだったのです。
こんなのもあります。毎年二月のはじめになると、天気予報では「立春を迎え、暦の上では春」などという言葉を耳にすると思いますが、現在の暦の二月は一番寒さに震える時期。こんなに寒いのに、何が春だと思ったもんです。
こんな風に、暦だけの世界の話をすれば、旧暦で暮らすことの方がしっくり来ると思うと思うのは、私だけじゃないと思います。とは言え、いまさら暦を旧暦に戻すことなど無理なことなのは重々判っています、暑さ寒さなんかどうでも良いという方も少なくないのが今の世の中です。
それらを承知の上で、せめて南の島の民謡に縁を持った私達は、文化としての暦、旧暦も学ぶ必要があると思ったりするのです。
まとめ
琉球民謡の世界で歌われる歌詞は、この旧暦に合わせた季節感で歌い継がれている唄が沢山あります、そして、旧暦には、日本の美しい季節感が詰まっていると、そんな風に思うのです。
今の時代にあっても、琉球だけに限らず、日本全国を見渡しても、たとえば、集落の行事などは旧暦で動いていることは少なく有りません。旧暦は日本人の原風景だと言っても過言じゃないでしょう。
暦については、語り尽くせない奥の深い歴史が詰まっていますし、私程度の知識ではまだまだ知らないことは山程あります。興味のある方は是非、調べてください。
もはや、今の社会では、旧暦はどんどん忘れられてしまう暦なのかもしれませんが、せめて、民謡を演る我々は、旧暦について知っておくと、民謡の世界が広がるのは間違いありません。
コメントを残す