民謡コンクールのお話
沖縄の地には、民謡を後世に残し、伝統文化を発展させるということを主な目的に設立された、流派、団体が幾つもあります。
その、各流派、団体が定期的に開催しているのがコンクールと呼ばれる審査会です。
民謡コンクールとは?
私達が普通にコンクールと聞いて、想像するのは、腕前を競って賞を貰うと言うものではないでしょうか?
ところが、民謡コンクールは少々違っていて、武道などでいうところの昇級・昇段審査の様なものです。
決められた課題曲を演奏して、一定基準の演奏が出来ているかどうか?が審査され、賞が与えられます。
たとえば、当会が所属する、琉球民謡保存会では、「新人賞」「優秀賞」「最高賞」と段階を踏んで、それぞれの賞の課題曲を持ってコンクールを受験するのです。
コンクールは、誰でも受験することが出来ますが、受験するには、必ず、コンクールを開催する流派や団体に所属する必要があります。同じ唄でも、各団体によって、三線の弾き方や唄の節回しが違ったりするので、これはある意味当然でしょう。
各団体には、それぞれの考えに沿って、課題曲はもちろん、審査の基準なども決められています。弾き方や節回しの違う唄を基準も無しに、審査して賞を与えることが出来るハズもありませんから。
流派や団体について
正確な数は分かりませんが、現在、琉球民謡の流派、団体は20~30程もあると言われています。
古典と民謡、八重山や宮古と言った区分けは、ある程度知っている方には判りやすいと思いますが、沖縄本島の民謡の団体だけでも幾つもあるのです。
それぞれが、コンクールを開催していると、一体どの団体に所属すれば良いのか?初めての方にとっては選ぼうにも選べない、と言った話になるのは当然でしょう。
そもそも、と言う話で、特に内地に暮らす私達にとっては、コンクールという存在さえ知らないと言う方がほとんどじゃないでしょうか。
コンクールと言うのは、民謡を楽しむ為の手段の一つであって、コンクールで賞を貰っているから凄い、などという話では無く、会に所属しなくても民謡を楽しむことが出来るのはいわずもがな、という話です。
団体に所属する云々という話はここではさておき、突き詰めて民謡を演って行く過程で、もっと民謡を知りたい、と言う中でコンクールと言う目標が出てくる、それが自然な流れでは無いかと思うのです。
流派 団体の選び方
流派や団体を選ぶにあたって、まずは自分が好きな民謡の団体に所属するということが一番手っ取り早いと思います。
たとえば、関西だと、宮古民謡を演りたいなら当会がありますし、八重山民謡なら大工先生の教室がありますし、沖縄本島の民謡ならば、登川流の教室、その他古典の教室もあるし、内地とは言え、沢山の流派、団体があるという関西は幸せな環境です。
何も知らずに、自分が始めて三線に触れた先生が、たまたま登川流で、登川流を学んでいる、民謡酒場で歌っていた方に憧れて門を叩いたのが宮古民謡だった、そんなパターンも実際に耳にします。
私などはどちらかと言えば後者のパターンに近く、宮古民謡はもちろん大好きですが、最初に宮古の民謡を教えたいただいた先生の人柄などに触れ、その一門でこうして民謡を続けています。
コンクールを受験するにあたって、内地に暮らす我々は、最低でも受験の度に、コンクールが開催される沖縄の各地の会場へと足を運ぶ必要もあります。
当然、受験費用以外にも旅費などの負担が必要となるワケですが、新人賞、優秀賞などは、内地で受験したり、ビデオで受験したりすることが可能な流派、団体もあります。
コンクールを最初から意識しているのであれば、それらのことも、所属する流派を選ぶ検討材料として知って置くと良いかもしれません。
コンクールでは何をするのか?
もちろん、自分が受ける賞の課題曲を演奏するのは大前提です。
決められた課題曲は、何曲かある唄の中から、抽選で決められたり、自分で決めることが出来るなど流派、団体によって違います。
普通は専用のツメを使って演奏しますが、自ツメもOKなところもあるし、古典などでは、派手なツメは好ましくない、派手な赤いスンチー塗りの棹や胴巻きなども良しとはしないと言う先生もいるそうです。
礼に始まり礼に終わる、それらは当然として、ピアスや指輪の禁止が応募要項に明記されていたり、流派、団体による違いは幾つもあって、初めからコンクールを意識して流派に所属するのであれば、受験費用なども含めて、それらのことも検討材料として知っておくことは大切かもしれません。
まとめ
色々と書いて見ましたが、やっぱり教室の雰囲気などに触れて見ないと判らないことが多いのも本当です。
各教室、見学や体験を行っている所は沢山あるので、そこは遠慮や気後れは無しに、足を運んで、疑問点などは色々と訪ねて、実際に感じて来るのは大切だと思います。
特にコンクールが自分の唄三線の目的の一つにあるとなれば、この先何年もお付き合いすることになりますから。
会の雰囲気が合わなかったりすると、目も当てられません。
実際に、教室に通うようになって、同じ三線音楽でも、ポップスばかりでコンクールなどとは違った会だった、練習後の打ち上げが目的な会だった、コンクールを開催する流派などに属していなかった、そんな話も耳にします。
何度も書きますが、コンクールだけが三線ではありません。それでも、コンクールという目標を持つことで、私自身は沢山の縁に恵まれ素晴らしい経験を積み重ねています。
コンクールを受験することの意味、楽しさ、そんな話も、これから沢山紹介していきたいと思います。
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